AO Trauma Davos Course – Managing Pediatric Musculoskeletal Injuries Davos, 2016/12/5-12/8 松村 福広先生 (東京西徳洲会病院)

2016年12月スイスのダボスにて開催されましたAO Trauma Course – Managing Pediatric Musculoskeletal Injuriesに参加しましたので報告させていただきます。
本コースへの参加目的は、2017年3月に日本でAO Trauma Pediatric Courseを開催するにあたり、実際にその会に参加して小児外傷治療のアップデートを学ぶとともにコースの進行方法などを理解することでした。約5年前にPediatric Courseが日本で開催されているのですが、小児外傷に対する考え方や治療法が大きく変化していることが予想されましたので、現時点でのワールドワイドな考えに実際触れてみたいという思いがありました。
岡山医療センターの佐藤徹先生も一緒に参加(2017年3月に横浜で開催されるAO Trauma Course – Managing Pediatric Musculoskeletal Injuries コースChairpersonとして)されました。

コースのタイムスケジュールは5日(月曜日)から8日(木曜日)までの4日間、午前8時から12時、昼食休憩をはさみ午後13時30分から17時30分までぎっしりと予定が組まれていてなかなかタフなものでした。コースはChairperson1名、Co-Chairperson1名、Faculty13名が担当し、参加者は約50名ほどでした。講師の先生方は全員が小児専門施設で外傷治療を行っているようであり、その経験や知識には驚かされるものでした。一方参加者は小児病院で勤務している先生もいましたが、多くは大人も含めた一般外傷を担当している先生達であり、小児外傷も学びたいために参加しているようでした。 本コース最大の特徴は、とにかくディスカッション(合計14回ありました)が中心になっている点です。そのため室内は6つのラウンドテーブルがあり、8名ほどの参加者と2名のファカルティーがそのテーブルを囲む形で座ります(写真)。

振り分けられたグループは4日間同じです。講義は初日の午前中に総論的なものこそありますが、各論の講義は全体を通してもごくわずかです。
プログラムは15のmodule(テーマ)が設定されており、それぞれのmoduleは小児外傷総論、上肢外傷、下肢外傷、感染などの合併症、開放骨折や脊椎骨盤骨折から虐待まで多岐に分かれています。各moduleの最初には症例が5,6例提示され、まず参加者はARSで回答します。次いで45分ほど最初に提示された症例と類似(時には同じ)症例について各テーブルでディスカッションをします。再度ARSを行い、ここで最初のARSの回答とディスカッション後の回答にどのような変化が起きたかを確認し、各moduleのモデレーターがまとめます。最後に各グループで学んだことを各グループで代表者が発表し、それらに対してファカルティーや参加者が質問し意見を述べます。
各国の医療事情や生活環境が異なっているため興味深い意見も多くありましたが、やはりファカルティーの圧倒的な経験値と知識には驚かされるとともに学ぶべきことが多くありました。やはり小児骨折も系統的に学ぶ必要性がありそうです。 practical exerciseは合計5コマありました。ここでは本コースのメインとなるElastic Stable Intramedullary Nailing (ESIN)の使用法を学び、実際にモデルボーンに使用しました(写真)。

文献ではESINの特徴や使用時のピットフォールについて知っていることもありましたが、実際に使用するのは初めてです。ESINの“しなり”を利用した固定は下肢だけでなく上肢にも幅広く使用できるのが特徴だと感じましたが、当然注意点も多く日本で安全に使用されるためには、基本事項をしっかりと押さえておかなければならないことが再確認されました(ESINは日本でも今年の12月末より順次導入される予定です)。ファカルティーたちもとにかく基本事項の遵守については何度も繰り返し強調していました。
私自身も久しぶりのダボスコース参加でしたが、やはり非常に有意義なものでした。どのコースに来ても新たな発見とともに、多くの諸外国の先生方と交流を深めることで外傷治療のモチベーションが上がることは間違いのないことです。そしてこのダボスで学んだことを日本の先生方にも良い形で還元していくことが重要であるとあらためて感じました。
最後になりましたがこのような素晴らしい機会を与えて下さいました澤口毅先生、佐藤徹先生に感謝いたします。