AO Trauma Faculty Education Program (FEP) Hong Kong, 2015/10/10 – 10/11 塩田 直史先生 (岡山医療センター)

2015年10月10日から11日まで香港で開催されたAO Trauma Faculty Education Program (FEP) に参加させて頂きましたのでレポートいたします。諸先生が、日本から毎年参加され報告をされておりましたので、コースの概要を知っていたことが、何より心強かったです。
本コースは、pre-courseとしてのe-learning、本コースの香港でのface to faceセッション、更に終了後のpost-courseとしてのe-learningで構成されております。 pre-courseは、本コースまでの5週間かけて毎週課題を与えられ、こなしていく形式でした。文献や教科書的な内容をPDFファイルで読み、週によってはweb上に掲載されている動画を見て学ぶといってこともありました。毎週最後にクイズ(約40問)に答えていき、自己分析します。また、3週分にはチャット形式で講師とディスカッションすることがあり多彩なプログラム内容でした。特にチャット形式のディスカッションは全参加者の受け答えを見ることができ、他人の内容も勉強になります。1週間のタスクはすべて行うのに約2−3時間かかり、臨床の合間に行いなさいと言われましたが、なかなか時間が作れず大変でした。同様のことは、香港の医師も言っておりました。
そして本番の香港でのコースは、初日が朝7:45集合で17:15まで、翌日が8:00から開始で13:00までの1.5日間ですが、AOでは恒例の非常に濃密なスケジュールでした。今回は11ヵ国・地域から18名の参加者があり、facultyは4名でした。コースの内容は、大きく5つのパートに分かれています。最初のセッションは、今まで自分の学習で経験したbest caseとworst caseについて自己紹介を兼ねて皆に紹介することでした。全部で約2時間をかけて行います。
2つ目のセッションはlectureについての実習です。2グループに分かれて、あらかじめ準備を指示されていた7分のlectureを行い、facultyとその内容・プレゼンの問題点や改善点について話し合うことでした。

初日最後は、2グループに分かれ準備してきた10分のcase discussionを各参加者が行い、8名の参加者に意見を述べて頂きながら進行させ、Take home messageまでたどりつくと言った内容でした。
初日は、最後に何を学んだか、何が上手くできたかを皆に説明して討議する場をもち終了しています。

初日の夜は、参加者全員でホテル近くの中華料理店(ミシュランの星付き!)に行き、様々な内容を話題に食事を楽しみました。今回の開催は10月であり、中華料理では“上海蟹”がhot seasonです。今月だけの楽しみ!とのことで食べることができました。中華系の医師(中国・香港・シンガポール・タイ)はどんどん食べていきます。シンガポールからのfacultyに至っては、以前上海蟹を上海からシンガポールに持ち帰ろうとしてとっても大変だった(密輸?)エピソードを披露され、大いにもりあがりました。私も十分堪能させて頂きました。10月のコース開催万歳!
また他国の医師との間での話題で、タイからの参加者から“おいしい!”といきなり日本語でいわれ、よく知っているねといったら、タイの日本食材会社に“oishii”との名前の会社があるのだそうです。日本食自体だけでなく、日本語もworld wideになっていると感じられ、嬉しい限りでした。また、ラグビーのワールドカップで日本チームが頑張っている話しになり、スポーツは万国共通の話題になることがあらためて確認できました。

翌日2日目は、まず20分セットで行うpractical exerciseを参加者2人ペアで行うことから開始しました。モデレーター役が1回、参加者役が2回、オブザーバー役を1回行います。モデレーター役では、内容説明を行い、ビデオを区切って説明し、実際に骨切りやスクリュー刺入(LCPのdynamic compression固定、bendingしてのプレート対側への圧迫固定の実習を行いました。私の相方は、マレーシアの医師だったのですが、おおかたの実習の説明とビデオの紹介を私が行い、実習時の説明を相方が行うという分業が上手く行きました。日本のAOコースでもそうですが、説明を行いすぎては時間が不足しますし、実習時にインストラクターが手をだしすぎたり、説明しすぎたりしても実習にならなくてダメです。我々がモデレーター役の時は、最後に行ったこともあり、生徒役の参加者が実習が上手くできない等の色々なトラブルを上手に発生していただいたので、時間が足らずTake home messageまでたどりつきませんでした。時間厳守を指摘されました(後で他の参加者皆が、我々が色々トラブルを起こしすぎたとフォローしてくれました)。また、当初オブザーバー役は気楽と思っていましたが、実はこれが一番大変で、各実習終了後にお互いの司会でfeed back討論を行います。オブザーバー役はその進行と皆から意見を聞き出すといった仕事もありました。他人の仕事をほめるのも大変ですが、上手く改善点すべき点を説明することは、非常に難儀なタスクでした。日本語で行う時も難しいのに、英語ならなおさらです。素敵な笑顔で頑張りました。

そして、最後は、本日学んだこと、良かった点を挙げ、さらに自国に帰ったらどのようにfeed backしていくのかについて、個々にあてられfree talkしていきました。今回は日本から私だけの参加でしたので、必然的にこのような場合、他の参加者よりも多数回答えるようになるため、私の英語脳はフル回転!です。そうこうしながら、FEPコースを無事完遂することができました。さらにコース終了2日後にはpost-courseとしてのe-learningが指示され、すべてやり終えて終了となりました。
コース全体をふり返ると、大まかな点においては、今まで日本のAOコースの際に注意されていた内容とほぼ同じでした。全体も非常にオーガナイズされた日本のAOコースのレベルの高さが再確認できました。一方で、アジアの若手医師たちの英語力や教育・臨床にかける熱い思いに接すると、我々も更なる向上を目指して行かなければと意欲をかき立てられました。
最後になりましたが、本コースに参加の機会を与えて頂きましたAO Trauma Japan関係者の方々に、感謝いたしたいと思います。