Harborview Medical Center, USA, 2018/2/5-2/16 松井 健太郎先生 (帝京大学医学部附属病院)
2018年2月5日から16日までの2週間、AO Trauma Visit the expert fellowship制度を利用し、アメリカのシアトルにあるHarborview medical centerを訪問してきましたので報告いたします。
このfellowshipシステムは一般のAO Trauma fellowshipとは違い、「ある領域に特化したスペシャリストを2-4週の期間で訪ねる」というプログラムと書いてあります。私自身2013年にAO Trauma fellowshipでドイツに行き、はじめて海外の外傷治療に触れました。その後2015年にカナダ留学で足の外科を学び、足の外科領域の外傷をもっと深く学びたいと思っており、このシステムに申し込むことにしました。申し込むに当たって通常のフェローシップと違う点があります。第一に訪問先を自分で決めなくてはいけません。訪問先はAO Traumaのホストセンターでなくても良いですが、ホストとなる先生がAO Trauma facultyである必要があります。私の場合、足の外科&外傷というキーワードで複数の先生を候補に挙げ、まずAO Trauma Japan事務局にそれぞれの先生がfacultyかどうかを調べて教えていただきました。次に、候補とした病院と交渉し許可をもらう必要があります。これがまた一つのハードルです。私は複数の病院にお願いをすることにしましたが、どの先生も面識がありませんでしたので、連絡先がわかりませんでした。そこで、留学中にお世話になったカナダ、ヨーロッパにいる先生方にお願いをして連絡先を教えていただきました。メールでのやりとりの結果、病院から受け入れOKの返事をいただくことができました。ここまで揃って、初めてこのプログラムに申し込むことができます。私の場合、幸運にも2施設から受け入れ可の返答をもらったので、2週ずつ合計4週のプログラムで申し込んでみましたが、事務局から1施設のみの訪問に限るとの返事をもらいました。今後申し込まれる方はご注意ください。
Harborview medical centerの教科書や論文などを見たことがある方は多いと思います。非常に美しい術中、術後の単純X線画像が印象的です。また、学会などでのその影響力の大きさがパワーを感じさせる病院です。しかしながら、私が訪問したのは足の外科チームでした。3名の指導医がおり、外傷チームとは別グループです。2週間で見学した手術は23例、その内訳は人工足関節置換術、関節固定術などの外傷後の足関節足部再建術が8割、足関節骨折などの足関節足部新鮮外傷が2割という手術内容でした。そのなかでも特に印象的であった手術は、リスフラン関節に対しての手術でした。滞在中、新鮮リスフラン関節脱臼骨折手術が2例、固定術が1例ありました。この部位の手術はスクリュー固定がよいか、プレート固定がよいかなどの議論がある部位です。ハーバービューでは何と11本ものスクリューを入れる「ハーバービューらしい」手術をしていました。訪問しなければ、その背景にある哲学に触れることはなかったと思います。他にも、実際に見てみることでしか知り得ない様々なTipsを学ぶことができました。アメリカの病院は非常にルールに厳しく、手術は見学だけに限ることは当然ですが、スマートフォンやカメラを手術室に持ち込むことも禁止されていました。そのような状況でしたので、写真はほとんど残っておりませんが、必死でメモを取って過ごしました。非常に勉強になる2週間でした。蛇足ですが、韓国の骨折業界で足の外科をサブスペシャリティーとする先生の中にも、Harborviewにフェローとして訪問した先生が多くいらっしゃり、共通の話題になりました。この点でも、私自身の世界を広げることにつながり非常に有益なフェローシップでありました。
今回のフェローシップに際し、ご尽力いただきましたAO Trauma Japanの皆様、Facultyの先生方、留守にした間のカバーをしてくださった帝京大学外傷センター、整形外科の皆様に深く感謝いたします。
写真1: ハーバービュー救急入口
写真2: ハーバービュー病院正面