Leeds Teaching Hospitals, United Kingdom, 2018/9/3-9/28 原田 将太先生 (福島県立医科大学外傷学講座/総合南東北病院)

平成30年9月3日から28日の4週間、イギリスはリーズにあるLeeds Teaching Hospitals NHS trustに留学させていただく機会を得ましたので御報告させていただきます。Leeds大学はちょうど6月まで佳子さまが留学されていて日本でも話題になりました。まずなぜLeeds大学を希望したかという事からお話したいと思います。それはProfessor Peter V. Giannoudisの講演を何度か学会で拝聴し非常に感銘を受けていたからです。異国で教授になり、臨床も研究も世界の第一線で行っている医師がどういう日常を送っているのか単純に興味を持ったのです。非常に幸運な事に選考に通り、無事にfellowshipの権利を得たわけですが、留学前の書類提出がひとつの難関でした。今後留学される方のためにあえて記載しますが、”Certificate of good standing”という書類を、当初厚生労働省が発行する”行政処分関係英文証明書”と勘違いして提出していました(この書類も手続きから手元に届くまでに1ヶ月以上かかりました)。提出してすぐ指摘されればまだ良かったのですが、渡航3週間前になってcriminal record(犯罪経歴証明書)だという事が判明し、慌てて警察署に出向き発行手続きを行うなど職場には迷惑をかけてしまいました。さらに直前の2週間前になって英語で名前と住所が載っている公的証明書2通の追加提出を求められたため、また慌ててゆうちょ銀行の英文残高証明書を作成に行ったり、国際運転免許証を作成しに行ったりして本当に直前までバタバタしていましたが、何とか無事に出発することができました。 羽田空港からヒースロー空港にフライト後、地下鉄40-50分と電車2時間超を乗り継いでリーズに到着しました。Leeds General Infirmary(LGI)というMajor Trauma center(MTC)のある病院はリーズ駅から徒歩10分程で中心街に隣接していました。自分の宿は車で5-10分ぐらいのところにある同じ系列のSt. James’s University Hospitalの寮で、2人でキッチンとトイレシャワーはシェア、各々ベッドルームが用意されていました。スタッフ用のバスが各々の病院間を行き来しており通勤は非常に楽でした。

LGIの講堂で週末も含めて毎朝8時からトラウマミーティングが行われ、当日の手術症例全てと前日の手術後症例、入院症例、ディスカッション症例を検討していました。小児例は小児整形外科医による専門チームで保存治療から手術まで全て担当しており、ミーティングの最初に全ての症例がプレゼンされて小児チームは解散していました。最前列に約7-8人のコンサルタントが並び意見を言いあいますが、かなりスピーディに進みだいたい40分から50分ぐらいで終了して解散。そのまま見たい手術がある場合は手術室(theatre)へ行き手術見学をしていました。規則が非常に厳しく手洗いはできませんでしたが、結果的には並行して行われている様々な手術を見学することができて逆に良かったと思っています。手術室は約3,4列の部屋を並行して整形外傷チームが毎日使用しておりトラウマミーティングで目星をつけた手術を見学していましたが、医師看護師も含めてスタッフはイギリス人以外の外国人が非常に多いのが印象的でした。スタッフはこちらから挨拶すると非常にフレンドリーで快く対応してくれました。毎日10-15例前後の手術が行われていて、骨盤・寛骨臼骨折は現在年間150例程あるとの事、ただ骨盤寛骨臼骨折手術を執刀できる医師が、教授を含めて2人のみで非常に少ないのが現時点での問題だとのことでした。その他多発外傷例も多くありましたが、やはり高齢者の大腿骨近位部骨折は多く、骨接合術と人工骨頭挿入術は合わせて毎日5例前後の手術が組まれていました。その他特に印象的だったのは下腿の骨折に関してはリング型創外固定器が多用されていた事です。日本の中では我々の病院はイリザロフをよく用いる方の施設だと思っていたのですが、明らかに我々よりも多用していました。ロシアのクルガンで研修したイリザロフに精通したコンサルタントが数名いて、少なくとも週に3-5件ぐらいのイリザロフ症例がありました(私が行っていた月が特に多かっただけかもしれませんが)。Fix & flapが必要となるGustilo 3b等の下腿開放骨折はplastic surgeonと合同で手術するコラボレーション形式でした。そのためflapまでの期間待機期間がそれなりにあり日本の一部の病院で行われているようなOrtho-plastic surgeonが一貫治療を行うよりは長くなってしまっている印象でした。脊椎外傷は外傷チームとは別のSpine surgeonのチームが全て行っているとのことで、今回は特に見学しませんでした。

全体の組織としてはコンサルタント・レジデント含めて総勢70名前後の医師が在籍し、分担して24時間体制で診療・手術を行っており、現在22施設あるイギリスのMajor MTCの中でも有数の規模とのことでした。また昨年から夜間のヘリコプター搬送も可能となったようです。Giannoudis教授は外来・手術・大学での講義、さらにはresearch中の医師の指導等常に忙しく動き回っており、非常にエネルギッシュで見習うべきところが多くありました。非常に忙しいため外来は不定期に行っているそうですが、計3回教授外来を見学することができました。Pelvic fusionの症例や四肢骨折後の偽関節.感染等の難治症例もありましたが、一人ひとり非常に丁寧に病歴聴取を行ったり、身体診察をしたりしてかなり時間をかけておられました。遅い時は外来終了が夜9時前後になることもあるとのことでした。 また熱狂的なマンチェスターユナイテッドサポーターである教授自ら運転して、本拠地オールドトラッフォードまで試合観戦に連れて行ってもらいました。フットボール発祥の地で熱いプレーと応援を間近で観ることができて最高の思い出になりました。 最後になりますが、AO Trauma関係者の方々、不在中ご迷惑をおかけするにも関わらず快く見送ってくださった職場の先生方、そして不在中家事子育て全てこなしてくれた妻、寂しい思いをさせてしまった二人の息子、家族に本当に感謝しています。ありがとうございました。

写真1 病院外観 正面に見えるのがBrotherton wing。これ以外にもいくつものwingがあり病院は広大な敷地となっている。
写真2 外来にてProf. Peter V. Giannoudisと