AO Trauma Masters Course – Current Concepts – Soft tissue and Polytrauma Davos, Switzerland, 2015/12/6-12/11 宮本 俊之先生 (長崎大学病院 外傷センター)

2015年12月7日よりスイスのダボスで開催された、AO Trauma Masters Course-Current Concepts-Soft tissue and Polytraumaに参加したので報告します。今年は様々なコースに世界75カ国から1,450名の参加者と450名のfacultyがダボスに集ったそうです。日本からは総勢15名ほどの参加でした。

初日はsoft-tissue coverage for the non-microvascular surgeonというサブタイトルでマイクロ技術を持たない整形外科医がいかにして開放骨折の軟部組織治療を行うかがテーマでした。世界各国で形成外科医とコラボして治療するのは困難なことが議論され、「形成外科医は皮弁の生着率にフォーカスを当て、整形外科医が最も気にする感染、偽関節、機能障害の意識が低いと」というフレーズが印象深かった。それよりもアメリカにMichael Tilley先生という日本でいう土田先生(骨接合もフラップも全て自前で行う医師)がいたのが驚きだった。言葉や文化は違っても抱える問題は類似しているのを再認識した初日であった。

2日目と4日目はなんと自己選択のモジュールが準備され、soft tissue and polytraumaと全く関係ない内容のコースとなる。私は前腕骨折と感染のモジュールに登録されていたが、気持ちとしてはマスターコースを3日に縮めて欲しかったが、知らないことだらけで非常にためになった。

3日目は患肢温存か切断かの内容でKrettek先生の講義で「治療法を塾考し、患者と親密に話すことを切断する事より大切にしよう」と言ったことが非常に印象に残った。イスラエルの先生が戦争外傷を40分にわたってプレゼンした際には平和な世界で暮らしている幸せを感じ、ダボスに来た事を改めて認識した。

最終日は多発外傷をテーマにディスカッションが半日とレクチャー半日という内容であった。私が知らなかった様々な文献が紹介され、ダボスに来ると効率的にアップデートできることを実感した。グループディスカッションはあのPape先生がファシリテーターとされ、参加者3名(他の9名はどこへ?)と1時間半にわたり多発外傷のケースをベースに議論を交わした。damage control orthopaedics(DCO)の概念が誕生した経緯や、近年のearly appropriate care(EAC)に対する先生の意見を直接聞けて単純に嬉しかった。今の概念はsafe definitive surgery(SDS)という概念で直接その詳細を説明してもらった。詳しくはInjury(46)2015 1-3に載っていますので興味がある方は参考にしてください。要は蘇生技術の進んだ現在はETC(EAC)とDCOを患者の状態で使い分けるということでした。最後に「DCOは守りの手段であり、攻めの手段では無い」と言われたのが印象的であった。

5日間を通して留学中にお世話になった先生やAsia Pacificの先生方と再会でき、とても楽しく有意義な時間を過ごすことができた。わざわざダボスまでと思いの先生もいるかと思いますが、文献でしか知らない先生と直接接し、議論することができるまたとないチャンスなので機会があれば参加してみてください。

最後に私の強引な勧誘に負けてダボスまで付き合ってくれた長崎大学同門の4名の先生と留守中に様々な急患に対応してくれた長崎大学の同僚にこの場を借りて感謝申し上げます。