Fellowship Report Berufsgenossenschaftlichen Unfall klinik Tubingen(BG Trauma Hospital、BG klinik)の整形外傷部門に4週間、HPRV(AOのページの host centerの記載ではClinic for Hand, Plastic, Reconstructive and Burn Surgery)に6週間, AO fellowship, 2022/10/10-12/16 佐藤 陽介先生 (日本医科大学付属病院救急科)

2022/10/10から12/16までドイツ、チュービンゲンBerufsgenossenschaftlichen Unfall klinik Tubingen(BG Trauma Hospital、BG klinik)の整形外傷部門に
4週間、HPRV(AOのページの host centerの記載ではClinic for Hand, Plastic, Reconstructive and Burn Surgery)に6週間,AO fellowshipに参加する機会を
得たのでご報告いたします。

病院正面玄関

AO fellowshipについて;

私はそもそも2019年に参加予定でしたがCOVID19の影響で中止延期を繰り返し毎年参加希望を出し続けようやく2022年末に参加することができました。
チュービンゲンでの研修に関しては、2017年の吉田昌弘先生のAO fellowship
レポート、および善家雄吉先生のブログ(ukichi germany ss blogで検索)が
参考になります。
とはいえあまり情報がない中で施設選択から迷いました。マイクロサージェリーと骨盤寛骨臼両方学べるところはないかと欲張りな願望をかなえられそうな予想のもと選びましたが後述するように正解でした。また同時期に韓国からのAO fellowの方もきていましたが、同じく情報がないためAO Koreaの事務局に直接施設選択の相談をされたそうです。そんな方法もあったのだと皆様と共有したいと思います。

また皆様のレポートにないこととして私が言われたのはドイツでは手術室内での術野撮影は公式には患者の承諾がないと禁止だそうで、看護師等からは注意されます。スマホの手術室内持ち込みは可能で、執刀ドクターによっては個人情報が写っていなければ許可してくれることもあり、かなり個人的には戸惑いました。

期間に関しては、stipendは変わらない、個人的に生活費を負担する限りにおいては、行先決定後、host centerの病院と交渉の余地があるということです。コロナ禍で3年延期になっている間に所属病院も変わり、必要とされる手術も変わったこともあり、是が非でも両方で研修させていただきたいと懇願し、幸い同じ建物、同じ手術室であったこともありスムーズに両方の研修をさせていただきました。

BG klinikではAO fellow含め研修を受け入れ慣れており、寮を6週間格安で病院の裏に用意していただき、昼食は病院内食堂で無料になるカードをもらい、滞在費を節約することができました。しかし、困ったこととしては渡航前の事務的なメールの対応、寮の手配等の担当がoberartz(上級医)の先生になっていたため、臨床で忙しい中対応いただくことになり秘書の方ならよかったのにと思うことが多々ありました。

語学については、ドイツ語は少しずつ勉強を重ねていきましたがとても会話に
なるレベルにはなりませんでした。それでもやらないよりかは役に立ちました。英語は毎日online英会話をやって満足していましたが実際いってみるとそこそこ議論はできたものの、もっと自分の英語力があればもっと深いdiscussionができたのにと思うことも多々ありました。ドイツ人にとって日本と一緒で英語は第2,3外国語であり、全員がみな流暢なわけではありません。逆に流暢な人はかなりの早口で話すため、そのギャップについていくのが大変でした。

BG klinik tübingenについて;unfallとはドイツ語で事故のことであり、保険が違う関係上変性疾患は大学病院で、外傷関連はBG unfall klinikでと、建物ごと分けているとのことでした。ドイツではバス電車内のみFFP2マスクというのを装着必須で、街中ではマスクをしている人は1割以下、電車内食堂車や薬局で購入できます。院内ではこのFFP2マスク常時着用が必須で院内受け付けでももらうことができました。BG klinik内にはUWCH(整形外科部門)、AQOR(脊椎外科脊髄損傷部門)、HPRV(形成外科、手外科)、MKG(顔面口腔外科)が存在し、https://www.bg-kliniken.de/klinik-tuebingen/fachbereiche/ を参照いただくと各専門と、それぞれのDrの名前が一覧で見られるのでご参考ください。

12列の手術室に連日3,4件手術が入り、15時が定時でそれ以降は時間外扱いの
手術が2列で深夜まで入っていました。定時手術が詰まっており、頚部骨折の
手術等が時間外に行われるのは日本と同じだと感じましたが、切断指や開放骨折が来たときにはあっさり定時の手術が別日に飛ばされ、スムーズに入室していたのには驚きました。整形外科内には、人工関節チーム、膝肩スポーツ関節鏡チーム、足外科チーム、小児チーム、感染チームが存在し毎日全員でカンファレンスを行っています。私は、整形外科所属時は、骨盤寛骨臼班のDr. Herath, Dr. Kuperの手術を中心に入らせてもらいつつ、その他の手術にも自由に入らせていただきました。

骨盤寛骨臼班のDr Küper
足外科班のDr Achim

寛骨臼骨折は週2件程度で、ほぼStoppa単独で、腸骨近位まで骨折線が及ぶときはfirst windowも併用するとのことでした。骨膜下でツッペルできれいに展開し、corona morticeはバイポーラ―で凝固、をバットレスしながらcollinear clampで整復していくというスタイルで非常にシンプルで速いものでした。
ほぼルーチンで術中に3DCTを回してチェックし、必要に応じて追加固定する
こともありました。骨盤骨折に関しては、私のいるときにはvertical shearは
なく、仙骨+恥骨坐骨骨折が多く、high energy例、FFP例ともにIS screw+low route創外固定で治療、それが週3-4件ありました。

その他では足の外科の数も多く、踵骨骨折が週2-3件、距骨骨折が2週に1件程度あり、足外科のDr. Achimはかなり熱心にご指導いただける方でアプローチから整復法までご自身の完成された手法があり手術には一見の価値があります。

また、脊椎は別departmentであるものの脊椎外傷にも数こそ多くないものの時々参加してdiscussionさせていただきました。

 HPRV(形成外科、手外科)では、6週間平日はほぼ毎日遊離皮弁の手術があり、毎日参加してはdiscussionさせていただき、短期研修生には非常に向いている
施設だと思います。そのうち半分は骨髄炎やインプラント露出を含む感染例で、整形外科と合同での開放骨折に対する急性期のfix and flapはそのうち4,5件でした。私の目的であったレシピエント選択と術中のトラブルシューティングに
関して多くを勉強することができました。その他の時間で手外科の手術を見学
させていただきました。全体を通して整形外科も形成外科も非常にシンプルで
標準的な手技が多く、決して日本と全く違うことをやっているわけではないが、それだからこそ勉強になる部分がたくさんありました。

最後にこのような機会を与えていただいたAO trauma, AO trauma Japanの皆様お忙しい中研修期間を認めていただいた日本医科大学付属病院救急科の先生方、書類手続き等でご尽力いただいた札幌徳洲会病院の皆さまに感謝いたします。

私はとにかく情報がなく施設選びから非常に困ったのでチュービンゲンの研修等についてご質問があればご連絡ください。s-yosuke@nms.ac.jp 

HPRVのchief 、Dr.Daigeler