AO Trauma Course – Managing Pediatric Fracturesに参加して Davos, 2022/12/12-12/15 前原 孝先生 (香川労災病院整形外科)

2022年12月12日から15日まで,Davosで開催された“AO Trauma Course – Managing Pediatric Fractures”に参加する機会をいただきましたので
報告させていただきます。

今回はAO Trauma Asia Pacificのサポートプログラムに応募してこの貴重な
機会を得ることができました。今回のサポートプログラムでは同じpediatric courseに明石医療センターの脇 貴洋先生、上肢のマスターコースに産業医科
大学の善家 雄吉先生と大分大学の金崎 彰三先生が参加されており、コース期間中にも食事などご一緒して楽しく過ごすことができました(写真1)。

写真1:本場のチーズフォンデュを堪能しました

私は日本を10日に出国して11日の朝Zurichに到着し、11日の夕方の“Opening Ceremony and Founders’ Reception”から参加しました。久しぶりの大規模開催ということもあり、世界各国の著名なドクターが次々に登壇する豪華なセレモニーでした。

12日からコースがスタートしました。私と脇先生が参加したpediatric courseはChairpersonがアメリカNew YorkのDr. Daniel GreenとチリSantiagoのDr. Dalia Sepulvedaのお二人だったのですが、お二人ともサービス精神旺盛な方で笑いの絶えない楽しいコースにして下さいました(写真2,3)。

写真2:橈骨神経はここだ!と落書きをするダニエルとちょっと嬉しそうな脇先生
写真3:ご自身のスマホでも記念撮影しまくっていたダリア

コース全体を通してfacultyのチームワークが抜群で、様々な工夫を凝らした
大変楽しい内容になっていました。全体の構成は日本のコースと同様にlecture, discussion, practical exercise (PE)を組み合わせて進行していくのですが、
今回は印象に残ることが多かったPEを中心に報告させていただきます。

まず、何と言ってもelastic nailing について深く学ぶことができたのが最大の
収穫でした。1日目に大腿骨に対するretrograde and anterograde techniques
2日目には上腕骨近位部と骨幹部骨折、そして最終日には前腕骨の骨幹部と橈骨頭骨折に対する内固定の実習があり、ネイルのサイズ選択から実際に曲げる時のコツ,挿入時のtechniqueなどについて詳しく解説していただきました。また今回のコースで実習に使用したボーンモデルはどれも工夫されており興味深いものでした。ネイルを用いる実習では髄腔が観察できる透明なボーンモデルが用意されており、実際の手術で透視装置を使ってネイルの先端や方向を確認しながら進めていく手順が非常に理解しやすい内容になっていました(写真4)。


写真4:小児大腿骨のボーンモデル
骨幹部が透明な素材で作られている

また、小児の大腿骨近位部骨折専用の“pediatric hip locking plate”という、まだ日本には導入されていない小児用locking plateの実習もありました。インプラントはもちろん、デバイスも洗練されており、非常に使いやすいシステムになっていると感じました(写真5)。このように日本未導入のインプラントに触れることができるのも海外コースの魅力だと思います。

写真5:Pediatric hip locking plate(日本未導入)

さらにTriplane fractureの実習では自分たちでカットできる「骨折していない」ボーンモデルが用意されており、骨端線と骨折線を立体的に描いて骨折モデルを自ら作製しました。その後、その骨折を自分でスクリュー固定するという手順を踏むことによって立体的な理解を深めることができました(写真6)。

写真6: Triplane fractureの実習
骨折モデルを自分で作製することによって理解が深まる

コロナ禍でリアルな実習がほとんどなくなり、気軽に参加できるweb開催の
セミナーが増えていますが、やはりface-to-faceでなければ得られないものが
あることを痛感しました。日本国内のコースでも参加者の皆さんに楽しんで
もらえるよう、できる限り協力していきたいと思います。

こうして振り返ってみると、久しぶりに参加したDavosコースは予想以上の素晴らしいコースでした。Facultyの先生達の熱意が半端なく、コースの構成もよく考えられていて4日間を通して楽しく学ぶことができました。他国のドクターとの交流は視野を広げてくれますし、モチベーションを大きく高めてくれます。
何よりAOの最先端、すなわち世界の骨折治療の最先端に触れることができる、他では得られない経験ができます。若い先生方にはぜひ積極的に、いろいろな
意味で無理をしてでも経験していただきたいコースだと思います(写真7)。

最後になりましたが、今回このような素晴らしい機会を与えていただいたAO Asia Pacificの方々,AO Trauma Japanの先生方に心より感謝申し上げます。

写真7:全員の集合写真(Yellow: faculty, Blue: participant)