AO Trauma Course—Pelvic and Acetabular Fracture Management Davos, 2019/12/01 - 12/06 塩田 直史先生 (岡山医療センター)

2019年12月1日から6日までスイス、ダボスで開催されたAO Trauma Course — Pelvic and Acetabular Fracture Managementに参加させて頂きましたのでレポートいたします。
私にとって、ダボスでのAO Trauma Courseは、13年前以来、久々の参加でした。また、前回参加させていただいたのと同じPelvic and Acetabularコースでもあり、その間に治療方法ひいてはAOがどのように変化しているのかも楽しみの一つでした。
今回は、AO Trauma Asia Pacificの好意により、参加費・旅費の補助をいただき、成田からチューリッヒへの直行便にて手配いただくという、幸運にて参加させていただきました。
初日の12/1夕方から、コースレセプションがありました。前半の参加者があつまり、大ホールが埋まる盛況で(500人以上でしょうか)、AOの新しいロゴも紹介されていました。
また初日夜の食事は、Japanese nightということで日本人参加者が集まることになっておりました。すると、その寸前に澤口先生のAO Trauma Asia Pacific Regional Board Chairperson就任決定の報が入り、お祝いの宴となりました。当初、私は気楽に参加しておりましたが、Jennifer、Isabellaをはじめとした香港の事務局組に加え、CW Oh先生がスポット参加され、さらにお祝いのスピーチにSuthorn Bavonratanavech先生も駆けつけられ、豪華な会となりました。我々も非常に誇らしいとともに、今後の澤口先生の活動の手助けができるよう、さらに日本のメンバーで盛り上げていかねばと強く思いました。

12/2から本格的にコースが始まりました。今回のコースは実質4日半のコースで、途中4日目(木曜日)にキャダバートレーニングがあるという設定です。前半の3日は、講義・ボーンモデルを使った実習そしてSmall group discussionがほぼ同じ時間配分される近年のAO Courseと同様な状況でした。内容的には初日はacute management、2日目はring fracture、3日目はacetabular fractureと充実した内容でした。他の参加先生からもその内容については詳細が加えられると思いますので、私はボーンモデルを使った実習について報告します。
初日のacute managementではvertical displacement typeを想定した肉付きモデルを使用して、患側下肢を牽引内旋しつつ両側からC-clumpにて後方を圧迫固定する実習をおこないました。上手に圧迫できれば、開いた骨盤腔に入っている風船から空気がチューブを通じてもれて出てくるのがわかる設定でした。ただ、何回も使われているモデルでもあり、手技もかなりピンポイントで整復しなければ成功しないらしく、我々のグループは、ピン挿入位置の確認だけで、固定は上手く出来ませんでした。また、午後からの実習では、sacral fractureに対して、IS screwと後方のtension band plateを行う実習を行いました。世界の流れからインプラントはステンレス製であり、術中bendingが非常に容易であることが印象的でした。
2日目はring fractureが中心で、spinal instrumentを使用した後方からの固定を、ボーンモデルを使い行いました。日本では、私自身ではspinal instrumentを使用した手術は行っていないので、貴重な体験となりました。また実習の最後には、同日朝のSmall group discussion中にSancineto先生に教えてもらった恥骨枝screwを3穴のsmall plate使って固定する方法をご教授いただいたりと、ご高名な先生方の工夫された手術を実際に指導の下で試せるため、非常に勉強になりました。
さらに3日目にはacetabular fractureに対するplatingの実習で、今まで何気なく固定を行っていた後方アプローチでのplate固定時も、lag screwをどう応用して固定するか、同配置すると上手に固定出来るかといった現実的な実習がありました。また前方のplate固定時においても、微細なplateのbending方法の工夫や、後柱スクリューの挿入時の透視確認の方法など、実際の手術にすぐにでも役立つ知識を学びました。

そしてそれまでの3日間の学習を活かして、4日目にキャダバートレーニングが有りました。今回参加するまでの自分自身の経験上の疑問点に加え、今回のコースで学び習得した知識を、実際にキャダバーを用いた実習で講師の先生方に質問しながら確認出来るという、とても贅沢な時間でした。たまたま我々は上田先生・依光先生と日本人3人で固まり、さらに講師には澤口先生が専属でついて頂けるという贅沢なテーブルで実習させていただきました。またpararectus approachについてはMarius Keel先生に直接質問しながら展開していただき、疑問点が解決しました。私にとって、非常に有意義な時間でした。
コース全体をふり返ると、世界各国から非常に意欲のある医師が集まっており、こちらも負けられない!と思うことが多かったです。また、前回参加したコースと比較しても、分類や診断・治療など、どの分野においても非常に内容は進歩しており、全く違うコースの印象でした。やはりAOコースは定期的に参加し、ブラッシュアップしていかないと世界について行けないと感じました。
最後になりましたが、本コースに参加の機会を与えて頂きましたAO Trauma Asia Pacific、AO Trauma Japanの関係者の方々、また留守の病院を守っていただいた佐藤 徹先生をはじめ皆様に感謝いたしたいと思います。