2021年11月 UNIVERSITÄTSmedizin der Johannes Gutenberg-Universität Mainz での研修機会を得ました。
当初、2020年9月に訪問予定でおりましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一年延期となりました。延期と知らされていたものの、一向に収束する様子の無い感染拡大に今回も無理かと諦めかけておりましたが、無事渡航することが叶いました。

<写真1>Dr. Wagnerと筆者
現地での勉強用に日本から持ち込んだ私の骨盤のボーンモデル
右腸骨にProf. Rommensより、左腸骨にDr. Wagnerよりサインをいただき、宝物となりました。

マインツ大学といえば、Prof. Pol Maria Rommensがいらっしゃったことで名を知る先生方も多いのではないでしょうか。ライン川を抱えるRheinland-Pfalz州の州都、マインツに在する公立の大学病院です。Prof. Rommensの元で学びたいとの希望で同院をフェローシップ先として選択しましたが、私が訪問する直前、2021年9月末で引退されました。私の指導医は、Prof. Rommensの元で主に骨盤,寛骨臼手術を担当されていたDr. Daniel Wagnerとなり、彼が直接の指導者となる最初のフェローとなりました。

月曜~金曜 朝7:30のカンファレンスで一日が始まります。マインツは北緯50度に位置するため、秋~冬は日の出前の暗い時間からカンファレンスが始まります。前日手術症例、前日撮影された入院患者のレントゲン写真、新入院症例、当日手術症例の提示と進みます。
1例目の手術患者はカンファレンス開始と同時、7:30に手術室に入室しますが、定時手術に関しては、麻酔導入から体位取りまでは麻酔科とオペ室スタッフが行います。診療科スタッフはカンファレンスを終えて8時過ぎに手術室に向かいます。

外傷センターと整形外科は、主に専用手術室4室と、外来手術室2室で手術を行います。1室あたり一日3-4件の手術をこなしていましたが、過去と比較すると減少しているとのことです。高齢者の低エネルギー外傷が増え、交通外傷が減少しているという流れは日本と同様です。手術は、コンサルタントと呼ばれる専門医クラスが行い、日本のように外傷手術をレジデントが行うということはほとんどありません。一定の学年になり、試験を受けると執刀医となる資格を与えられるとのことです。


私の訪問した時期は、レジデント数が不足している時期で、皆病棟業務に追われていました。そのため、自身の受持患者の手術であっても、私が助手に入ると、「人手があるならば自分は病棟仕事をする」といって、手術室から出て行くこともしばしばありました。日本国内で指導医の立場にあたる身からするとあまり感心しませんでしたが、フェローシップで訪問している身からすると、第一助手で手術には入れる機会が多かったことは非常に有意義でした。

<写真2>挿管中の患者搬送時のICUベッド
モニター、人工呼吸器、ボンベ、輸液ポンプなど、必要機材が機能的に装備されたタワーはタイヤ付きでベッドと連結可能で、重症患者を少人数で安全に搬送できます。
日本でもこのようなシステマティックな装備をお持ちの施設はあるのでしょうか。

使用するインプラントに関しては日本と大きくかわることは無い印象です。ドイツの医療保険制度では、診断名により入院医療費が決定されます。日本のDPC制度に似たシステムのようですが、日本では出来高払いとなる手技料、手術材料費も包括されることが異なります。また、日本のような保険償還価格が無いため、同一目的のインプラントでもメーカーにより価格の違いがあります。このため、できるだけコストをかけずに治療することを目指し、安いインプラントを選択します。とはいえ、高額なインプラントの使用にメリットがあると判断すれば躊躇無く選択していましたので、過剰な倹約をしているわけではありません。日本の医師と比較すると、医療コストに対する意識は高いと感じました。

手術中に、治療方針、手術方法について意見を求められることが多々ありました。私自身の考え、日本で一般的になされている方法などについて述べ、現地での方法との違いなどについて意見交換を行う機会が多数あったことは非常に有意義でした。研修開始から数週が経過し、親しくなった時期に私の意見を述べたところ、Dr. Wagnerより、”You’re the first Japanese who criticize me!” と笑いながら言われたことを覚えています。もちろん冗談でしたが、日本人は引っ込み思案で自分の意見を言わない、聞いてもYeahと答えるのみなので、理解しているのかいないのかわからない、ともおっしゃっていました。私は性格的に出しゃばりすぎたのかもしれませんが、たった6週間しか無い期間ですので、今後訪問される先生方は、大いにご自身の考えを述べ、意見交換されることをおすすめします。新たな視点、知見を身につけるまたとないチャンスとなることでしょう。

<写真3>毎年11月11日から開催される”Fassenacht”(Carnival)
事前チケット購入制、ワクチン接種証明がないと入場できないという制限付きでの開催でした。

帰国時はオミクロン株の感染拡大が騒がれはじめた時期にあたってしまいました。航空機予約変更ができなくなったり、帰国後に施設停留を含む2週間の隔離を求められたりと、当初の予定通りには進まず、職務復帰が遅れてしまいました。


本稿執筆時点においても新型コロナウイルス感染症拡大についてまだまだ先の見通せない状況が続いています。人の動きが制限され、学会や研修会もオンラインで開催されることが多くなっていますが、他国で行われている外科治療を目の当たりにし、現地の医師達とその場で議論、意見交換をするということはデジタルで代替できるものではありません。海外に出かける行為そのものに否定的な意見が出る社会風潮もありますが、with コロナ時代においても、かわらずこのフェローシッププログラムが施行され、多くの先生が参加できることを祈ってやみません。

最後に、研修期間中の生活を支えてくれた妻、長期の休みをお許しいただき、業務をカバーいただいた上尾中央総合病院、帝京大学外傷センターの皆様、このような研修の場を与えてくださったAO TraumaならびにAO Trauma Japanに心より感謝申し上げます。