AO Trauma Courseレポート 新横浜プリンスホテル, 2023/2/23-2/25 高群 浩司先生 (新百合ヶ丘総合病院)
今回2023年2月23日から25日まで新横浜で行われたAO Trauma Course – Basic & Advanced Principles of Fracture Managementのテーブルインストラクター(TI)として参加させていただいたため、今後TIとして参加される方々の参考となればと思いTIレポートをさせていただきます。
今回Advanced Courseのchairpersonをされる予定であった新百合ヶ丘総合病院の峰原宏昌先生(実際には諸事情でご参加できず)にご推薦をいただき、TIとして参加させていただくこととなりました。TIとしての参加は初めてであり、AO法の原理原則を復習するために、2020年5月に発行されたAO法骨折治療第3版を購入し2月初め頃から暇を見つけては読み始めました。さらにAO Trauma Japan上級会員であれば視聴できるAO Trauma Videosに、AO Skills LabやPractical Exercise (PE) のvideo(解説はほとんどが英語で一部日本語有り)がありましたので何回か視聴して実際のイメージをして準備しました。
今回のAO Trauma CourseはMasters Seminarと同時開催で、さらにAO Trauma Japan 35周年であり、course最終日の25日にはMemorial Ceremonyが、26日にはMemorial Seminarが行われるため、多くの著名なinternational & regional facultyの先生方が参加されていました。コース前日の22日にはホテル入りし、17時よりpre-courseとしてSkills Lab & Table Instructor meetingが行われました。今回は海外豪華facultyの先生方も参加されているため、meetingでは英語で自己紹介をさせていただきました。TIは私を含めて5人で、Basic CourseのSkills LabとPEすべて、Advanced CourseのPEすべてに参加するために、ややハードなスケジュールでした。まず、Skills Lab全体の注意点等の説明を受けたあと、自分が担当するステーションでご一緒いただくfacultyの先生方(今回は林博志先生と吉田昌弘先生)と事前の指導方法の確認等を行いました。TI meetingでは、TIの役割についてスライドによる講義を受けました。TIの仕事としてPEがメインであり、直接受講者と接するため受講者がどこまで理解できているのか判断でき、すぐにフィードバックできる立場にいるためこのコースにおいて重要な役割を担っていると教えられました。テーブルでは、1.まず自己紹介、2.到達目標を意識させる、3.実習前に内容を確認する、4.成人教育を行う、ことを目標としました。
23日初日のTIの仕事として、昼からAO Skills Labがはじまりました。これは骨折治療に関する生物学的および物理学的な基礎を学ぶための実技実習で、私がBasic Courseを受講した年の2014年から始まったそうです。A〜Kまで全部で10ステーションありTIは2ステーションを担当します。Faculty 1名とTI 1名が1ステーションを担当し、1回あたり15人の受講生がラウンドしてきます。10分間でtasks、learning objectivesを説明し実際に受講生に体験学習してもらいtake home messageまで説明するというかなりタイトな内容です。やはり慣れるまでは進行がままならず、facultyの先生にご迷惑をおかけしてしまいました。
その後いよいよBasic CourseとAdvanced CourseのPEが始まります。Skills Labと同様に最初慣れるまでは進行や説明がうまく行きませんでしたが、徐々に最初の講義で勉強した、1.まず自己紹介、2.到達目標を意識させる、3.実習前に内容を確認する、4.成人教育を行う、ことを意識して指導するようにしました。さらにopen question, interactive communicationやpositive feedbackの意味を考えながら指導するようにしましたが、実際はfacultyの先生方がどのようにご指導されているかを見て真似ることしかできませんでした。Faculty教育を受けておられるfacultyの先生方は指導の仕方が洗練されており大変勉強になりました。
今回course翌日の26日にはMemorial Seminarがあり、海外や日本のfacultyの先生方の記念講演を拝聴することができました。その中でAO教育の御講演があり大変興味深い内容でした。AO surgical coachingについての内容ですが、一流のプロスポーツ選手は良い結果を出すために必ずコーチをつけます。同様に手術で良い結果を出すためには知識だけでは不十分であり、手術指導が有効であります。効果的指導の原則は、1.被指導者による目標設定、2.会話によるお互いの評価、3.前向きなフィードバック、4.明確な行動計画、であるとのことです。手術で良い結果を出すためには、1.解剖や手術法の知識、2.基本的手術手技、3.知識や手技の応用、が必要であると常々考えておりましたが、surgical coachingは2.と3.の習得に不可欠なものと改めて認識いたしました。
最後になりましたが、今回course中にお世話になりましたfacultyの先生方、TI初体験で一緒に緊張しながら参加したTIの先生方、AO Japanの関係者の皆様には深く御礼申し上げます。