AO Trauma Course -Basic Principles of Fracture Management 参加者レポート 宇都宮, 2026/8/20~22 桑木 稜平 先生 (岡山済生会総合病院)

 この度、2026年8月20日~22日に栃木・宇都宮で開催された「AO Trauma Course -Basic Principles of Fracture Management」に参加いたしましたので、ご報告させていただきます

 私は整形外科医として3年目になり、これまで骨折症例を中心に診療をしてきました。症例を経験するにつれて、慣れてきたことも増えてきた反面、骨折治療の原理原則についてまだまだ理解しきっていないことも多々あると感じていました。日常診療において骨折患者を診療する上で必要となる基礎的な知識・技術を学ぶとともに、実際の臨床場面でどのように治療方針を決定すべきかについて一度整理したいと考え、本コースを受講させていただきました。

コースの内容は、大きく分けて骨折治療の原理原則に関する総論から各論までの多岐に渡る「講義」、ボーンモデルや実際のインプラントを使用する実技的な「Practical exercise」、提示された症例ごとに治療方針について少人数グループでディスカッションする「Small group discussion」、体験型の講義の「AO Skills Lab」で構成されていました。

1日目は、AOの歴史や分類、骨癒合や骨折の治癒過程(Absolute stability、Relative stability)、プレートの使い方といった講義から開始となりました。その後、AO Skills Labでは講義で学んだ内容を実際にボーンモデルやインプラントを使って体験しました。スクリューを締めた際のトルクやドリル時の熱産生、スクリュー配置による固定強度など、日々の診療で気にはなっていたものの実際に体感することができなかったことを肌感覚で体験することができました。午後のPractical Exerciseでは、2人1組となってテーブルインストラクターの先生に指導していただきながら、Absolute stabilityを意識したプレートやスクリュー設置、locking compression plateを用いた内固定についてボーンモデルを用いて実践的に学びました。さらにSmall group discussionでは少人数グループに分かれて、骨折の分類・整復方法・安定性・インプラント選択について症例ベースでディスカッションして講義の理解を深めていきました。ディスカッションをする中で、自分とは異なった治療方針を立てる先生の意見も聞くことができ、とても勉強になり、興味深くもありました。濃密な1日目のコースが終了した後は全体懇親会がありました。Facultyの先生方や全国からの参加者とも交流し意見交換をする機会をいただき、とても貴重な経験となりました。

2日目は、朝からPractical Exercise、Small group discussionと続き、非常に実践的な内容が盛りだくさんでした。初日で学んだことを活かしつつ、1日目よりも議論が活発になっていったのが印象的でした。ボーンモデルを用いた創外固定の練習では、グループ内でも組み方を変えてみて比較するなど、普段の診療ではできないようなことも経験できました。また、午後には前腕骨骨幹部骨折のレントゲンをもとに内固定方法を術前計画し、実際にボーンモデルを用いて内固定する実習をしました。実習を行う中で、適切な手術手技を行うためには、個々の操作だけでなく、その前段階である術前計画が極めて重要であることを再認識しました。術前画像から骨折形態を正確に把握し、どのような整復を目指すのか、どのインプラントをどの位置に使用するのか、さらに術後にどの程度の荷重や可動域訓練を許容できるのかまでを事前に考えておく必要があると感じました。その後は疾患別の講義といったより各論的な内容について学び2日目は終了となりました。

 3日目はSmall group discussionから開始となり、関節内骨折の治療についてディスカッションしました。今までの症例と比べ、複雑な骨折型の症例も増えましたが、これまでに習ったAOの治療原則に基づいて、自分でも治療方針が立てられるようになってきたのを実感しました。その後は肘頭骨折に対するcerclage compression wiring、足関節骨折の内固定、大腿骨髄内釘の挿入といった非常に実践的な内容が盛りだくさんでした。そして最後には3日間の質問をFacultyの先生方にお答えいただきコース終了となりました。

今回のコースを通じて、日常診療において骨折患者を診療する上で必要となる基礎的な知識・技術を改めて整理するとともに、実際の臨床場面でどのように治療方針を決定すべきかを考える貴重な機会となりました。単に骨折部を解剖学的に整復して固定することだけを目標とするのではなく、患者背景や骨折型、軟部組織の状態、受傷機転などを総合的に評価した上で、最適な治療戦略を立てることの重要だと学びました。

手術を行う場合には、術前計画をより丁寧に行い、整復目標、固定方法、インプラントの選択、手術アプローチ、術後リハビリテーションまでを一連の治療戦略として考えことが重要だと感じました。今回学んだAOの基本原則を日常診療の中で実践し、手術手技だけでなく、治療適応や術後管理を含めた総合的な外傷診療能力の向上に繋げていきたいです。

最後になりましたが、Chairpersonである長崎医療センターの宮本俊之先生をはじめ、FacultyおよびTable instructorの先生方、本コースへの参加に際し快く送り出していただいた岡山済生会総合病院の先生方に感謝申し上げます。