University Medical Center of the Johannes Gutenberg University, Germany, 2019/9/16-10/11 岩井 信太郎先生 (富山市民病院)

今回、2019年9月16日より10月11日まで4週間、“Visit the Expert”にてドイツ、マインツのUniversity Medical Center of the Johannes Gutenberg UniversityのRommens教授の元で研修をさせて頂きました。渡航先を検討するにあたって骨盤輪・寛骨臼骨折が勉強できるところを、という前提のもと、マインツはこれまでに多くの先生が留学されており、レポートから充実した研修が期待できたこと、また、上司である澤口先生がRommens教授と研究、DTN(Distal tibial nail)の商品化などで交流があり、懇意にしていたことから、渡航先として推薦して頂きました。実際、2018年の岡山での骨折治療学会の際に直接お会いして挨拶させて頂きました。
研修についてはこれまでに多くの先生が報告されているとおり、朝7時30分からのカンファレンスで始まり、16時からの放射線科とのカンファレンスまでに1日2~3件の手術に参加、見学させて頂きました。また、木曜日はRommens教授の外来日であり、1日20人前後の診察を見学、合間に個々の症例の治療方針、経過を教えて頂きました。
手術内容は日本と医療制度が異なるためか、大学病院ではあるものの転子部骨折、橈骨遠位端骨折などの一般的な外傷から多発外傷、小児の骨折まで幅広く外傷の手術がありました。また、人工関節、関節鏡手術なども多く、日本との違いを知ることが出来ました。

目的であった骨盤輪・寛骨臼骨折は4週間で骨盤輪骨折を1件、寛骨臼骨折を4件、見ることができました。寛骨臼骨折のうち1例は4週間前に他院で手術を施行されたもののまったく整復が得られていなかった症例の再手術例であり、かつ、高度肥満例でしたが、豪快な展開からの正確な整復操作、プレート固定で難なく手術を行っていました。印象的だったのは、術中イメージで確認する回数が少なく、整復、プレートの位置を確認した後は、スクリューはほとんどイメージを用いることなく、挿入していたことです。Infra-acetabular screwなども方向のみ確認し、正確に挿入されており、骨盤の3次元的な理解の重要性を改めて感じました。
寛骨臼骨折のほかにも仰臥位、牽引台なしでの大腿骨骨幹部骨折の髄内釘や踵骨骨折に対するC-Nail、肩甲骨関節窩骨折の後方アプローチなど、これまで経験したことのなかった症例を見ることができたのも貴重な経験となりました。
今回、先に挙げたような症例の経験も収穫ですが、自分のこれまでの治療法、受けてきた教育を振り返る良い機会となりました。多くの手術はAO法に準じて行われており、これまでに自分が習ってきた手術手技と変わりがないことを確認できました。また世界的な施設であっても整復に手間取ったり、Rommens教授が回診で大腿骨骨幹部骨折の髄内釘術後の回旋異常を指摘したり、自分達が頭を悩ませることやピットフォールは、当然のことですが共通であることを感じました。
週末にはケルン、ハイデルベルグなどドイツ各地への小旅行へ行くことができました。ちょうど滞在中が日本でも各地で行われているビールの祭典であるOktoberfestの開催期間であり、本場ミュンヘンのOktoberfestにも行ってきました。事前に、休日は席の確保どころか各ビール醸造所のテントにもなかなか入れないことをネットで確認していましたが、一人ならどうにかなるのでは、と思っていました。しかし、土曜の夕方に訪れると、想像以上の混雑でテントの前には沢山の人が溢れかえっており、雰囲気のみを味わい、早々に退散し、街中のビアホールでOktoberfest用のビールを堪能しました。

大きなトラブルもなく研修期間は過ごせましたが、最大のトラブルが帰国前に発生しました。帰国予定がちょうど日本各地に大きな被害を残した台風19号の接近と重なり、予定していたフライトが当初、出発が遅れて台風が通過後に羽田空港到着予定だったものが、直前になり欠航となりました。前日分からの欠航もあり、空港カウンターでは振替も一切行えず、いつ帰国できるのかも不明な状態となりました。現地航空会社の職員と話した結果、航空会社からの振替便を待つよりもエクスペディアでフライトを探す方が早く帰れると考え、結果、中国東方航空でフランクフルト~上海~富山便を新たに購入し、当初の予定より2日遅れでの帰国となりました。航空会社から後で送られてきた振替便はベトナム経由でさらに1日以上遅れての羽田着であり、これも一つ良い経験となりました。
最後に、私にこのような貴重な機会を与えて下さいました富山市民病院 澤口毅先生をはじめAO Trauma Japanの諸先生方、忙しい中、不在中の対応をお願いした富山市民病院整形外科の同僚、そして単身での渡航を快く受け入れてくれた家族に感謝申し上げます。

写真1:Rommens教授と
写真2:イランからのfellowと
写真3:ミュンヘンOktoberfest