今回9月2日〜10月11日まで6週間、Harborview Medical Centerへ研修に行かせていただく機会を得たので報告いたします。
Harborview Medical Center(以下HMC)はワシントン州はシアトルにあり、アラスカを含む4州をカバーするlevel I Trauma centerです。同施設から出版されている“Harborview Illustlated Tips and Tricks in FRACTURE SURGERY”でご存知の方も多いかもしれません。私自身も同教科書で見た美しい整復位と無数のK-wireによる仮固定の術中写真に非常に興味を惹かれ今回fellowship先として希望させていただきました。同施設はJOAのトラベルフェローの先生方が訪れたり、私と同時期には中国やプエルトリコからもobserverとしてこられている先生がおられたり、対外的な交流も盛んなようでした。

HMCでは毎朝7時半ごろに患者が入室し麻酔をかけたり体位をとったりし、8時半ごろから手術が始まります。手術枠は豊富にあるようで、待機している患者を順にさばいて行っており、さばききれなかった患者は明日以降、土日も列の数は減るもののほぼ通常運転の状態でした。夕方を過ぎることもあまり気にしていない様子で16時ごろ入室して日付が変わるくらいまでかかる、といったこともありました(0時以降も全科で2列までは手術できるそうです)。アメリカは仕事のオンオフがはっきりしているというイメージがあったので少し意外に感じたのですが、日々定時を過ぎると手術室からプレッシャーをかけられ手術をしている身としては羨ましい限りでした。
アメリカでのfellowshipは手洗いができないので、それを逆手にとってとにかく沢山の手術を覗くようにしていました。observerという立場上、見学に徹するしかなく、身体の大きな先生方の肩口から必死に術野を覗き込んでいたため、看護師さんに5万回くらい“Step back,please!”と言われました。ヨーロッパなどに行かれた先生方のレポートなどを読むと手洗いできるのはやはり羨ましいなあと思ったりしますので、ご検討されている先生はその辺りを熟慮されることをお勧めします。
毎日あらゆる部位の骨折が手術されていましたがPilon骨折や脛骨高原骨折、TKA後の大腿骨顆上骨折が多かった印象です。Shoulder&Elbowのfellowを修了された先生もおり、骨折例のRSAも6週間で3例ほどありました。手術手技に関しては、非常に丁寧で特に整復操作にはかなり時間をかけて行っていました。関節面や第三骨片の固定、髄内釘手術の仮固定にplateを頻繁に用いていたのが印象的でした(ステンレス製のミニプレートで、とても安いのでコスト的にも問題ないそうです)。また若年例はもちろん、少し高齢でも日本人より骨質がよく骨が大きいので、シャンツピンなどを用いて骨をダイレクト操作して整復することが多いように思いました。しかし、全体として根底にあるのはAO法に忠実でオーソドックスな骨接合であり、普段の自らのpracticeが間違っていないことも確認できました。

また、病院実習に医学生が何人かきていたのですが、彼らの優秀さには不真面目な医学生であった私は大変驚かされました(corona mortisについてすらすらと説明できる医学生が日本に1人でもいるのでしょうか??)。やはり米国では整形外科医になるのは非常に狭き門のようで、学生の頃からのただならぬ努力が必要のようで、日本では希望すればなれるし、むしろ勉強が苦手だった人が多いよ(!?)と言うとかなり驚いていました。
Trauma groupの先生方はAttending, Fellow, Residentともみな親切にしてくださり、私の拙い英語での質問も最後まで聞いて丁寧に説明してくださりました。滞在の終盤にはDr. Norkにご自宅にお招きいただいたき料理とお酒を振舞っていただいたのもとても楽しい思い出となりました。

シアトルといえばイチローのいたマリナーズ、スターバックス発祥の地、レーニア山をはじめとした自然のイメージをお持ちと思いますが、現在1番勢いがあるのはAmazonで、Amazon GOというレジのないコンビニやAmazonの経営する実店舗の書店などが多く見られました。シアトルは気温も低く雨が多い都市ですのでもし行かれる先生がおられましたら時季に応じて対策をしていただけたらと思います。
最後にこのような機会を与えてくださったAO Traumaの皆様、6週間の長期不在を認めてくださった市立吹田市民病院の先生方に深く感謝いたします。ありがとうございました。 この機会を無駄にすることなく、これから日本の骨折治療の発展、レジデントの教育に還元していきたいと思います。

写真1:病院玄関
写真2:Dr. Nork ご自宅にて