Oxford University Hospitals, UK, 2026/8/3~9/11 安井 行彦 先生 (JCHO星ヶ丘医療センター 整形外科)
AO Trauma Fellowshipとして、2026年8月3日から6週間、英国Oxford University Hospitalsで外傷診療を研修する機会をいただきました。ほとんどの期間は外傷センターがあるJohn Radcliffe Hospitalで研修し、待機手術を中心に行うNuffield Orthopaedic Centreで手外科の手術も見学することができました。

英語圏で、手術に手洗いで参加できる施設を希望し、コーディネーターにOxfordを提案していただきました。OxfordにはNEJMやLancet、JAMA、BMJなどImpact Factor50以上の雑誌に掲載される、数百~千人規模のRCTを多数行っているProf. Matthew Costaがおられ、英国の外傷診療を支える考え方を学ぶことができると期待を膨らませて出国しました。

6週間の滞在で最も印象に残ったのは、英国と日本では治療方針を決める判断基準がかなり違うということでした。英国では、治療方針を考える際にevidence、cost effectiveness、time efficiencyがかなり強く意識されています。Prof. Costaの手術に参加した際には、医療費と治療効果についての考えを、図示して説明していただきました。
日本では、少しでも患者さんの予後を改善できる可能性があれば、多少コストや時間がかかっても最大限の治療を行おうとする傾向が強いと思います。一方、英国では、「その治療によって患者が実際にどれくらいbenefitを得るのか」「そのために必要なコストや医療資源は妥当か」を考える姿勢が常にありました。エビデンスを基準に医療全体を効率よく回すことが、より重視されているように感じました。

AO FellowshipのsupervisorであるMr. Penn-Barwellは、軍医としての経験も豊富で、骨盤・寛骨臼骨折、開放骨折、銃創など多くの重症外傷を専門とされ、Oxfordにおける開放骨折感染率が極めて低いことを報告されています。英国の下肢開放骨折治療ガイドラインに沿って、初期治療から整形外科と形成外科が連携し、fix and flapを行う様子は非常にスムーズでした。上腕骨近位端骨折に伴う腋窩動脈損傷がたまたま2例続きましたが、血管外科との連携も良く、大伏在静脈をreverse vein graftとして用い、あっという間に損傷動脈が再建されました。各診療科の連携以外にも、職種間の連携も良好でした。病棟管理は整形外科専属のOrthogeriatrician、創の処置・管理はNurse、術後外来診察はExtended Scope Physiotherapist、ギプスやシーネはPlaster technician、術中透視はRadiographerなど、それぞれの職種が広い範囲で責任を担っており、医師は整形外傷の手術に集中できる仕組みになっていました。日本では医師が治療に関連する多くの業務を担うことが多いため、大きな違いを感じました。

私は英語が得意ではないので、みんなでスポーツすると自然に仲良くなる、のような感覚があると信じて手術に手洗いで参加できる病院を希望しました。途中からは多少の信頼は得たようで、私とOxfordの後期研修医だけで橈骨遠位端骨折の手術をしてコンサルタントが外から見ているというようなこともあれば、整復や固定法で困ったとき、Yuki, what would you do?と意見を求められ、名案だと判断されると採用されることもありました。少しは成長したように感じ、嬉しかったです。
Oxfordという街そのものも、このfellowshipを特別なものにしてくれました。歴史的な大学の建物を中心とした街並みが本当に美しく、歩くだけで歴史を感じる魅力的な街でした。まるで、ハリーポッターの世界の中に入ったような感覚でした。最初の2週間は家族とともに過ごし、その後も中古自転車を購入して、緑に囲まれた川沿いをサイクリングしたり、週末にはWimbledonやCotswoldsを訪れたりと、英国での生活も楽しむことができました。
この貴重な機会を与えてくださったAO Trauma Japanの先生方、受け入れてくださったOxford University Hospitalsの先生方、そしてfellowship期間中に支えてくださったすべての方々に心より御礼申し上げます。今回得た経験を今後の日常診療と若手医師の教育に還元していきたいと思います。
