2019年8月22日(木)から8月24日(土)まで横浜でAO Trauma Course – Basic & Advanced Principles of Fracture Managementが開催され、Table Instructor(以下TI)として参加させていただきました。まずこのようなレポート執筆の機会を賜りましたことに心より感謝申し上げます。現時点でTIの応募条件は、AO Trauma Advanced Course修了後5年以上経過していること、AO法について熟知しかつAO Traumaの教育活動に賛同していること、Practical Exercise(以下PE)で使用するAOインプラントについて充分な使用経験があるとともに指導できるだけの充分な知識があること、外傷整形外科の臨床経験が10年以上、原則50歳以下となっております。私自身の経歴ですが、2004年に医学部卒業、初期研修修了後の2006年に整形外科入局、2012年にBasic Course修了、2014年にAdvanced Course修了、そして今回念願のTIに初めて選出していただきました。3-4年ほど前に現行の応募条件に変更された当時は悔しい思いもありましたが、私自身の直近5年を振り返り、またTIとして初めて参加させていただいた結論から言いますと、きわめて妥当な応募条件であると実感しております。

Basic Courseは佐賀県医療センター好生館の前隆男先生、Advanced Courseは湘南鎌倉総合病院・札幌東徳洲会病院の土田芳彦先生をChairpersonとして、両コースが同一日程にて開催されました。両Chairpersonを筆頭とする15名のLocal Facultyに加え、International FacultyとしてSchelkun先生(USA)、Regional FacultyとしてPoon先生(シンガポール)、Lavadia先生(フィリピン)、Lau先生(香港)が参加されました。TIは6名で、Basic CourseのAO Skills LabおよびPE(8回)と、Advanced CourseのPE(4回)を担当しました。
コース開催前日21日(水)の夕方にLocal FacultyとTIが集合し、Pre-courseが行われました。まずAO Skills Lab全10ブースを全員でラウンドして、実施要綱を入念に確認しました。今回このAO Skills Labに関してはTIに事前学習資料(ブックレット、ビデオなど)の案内が全くなく、少々不安なスタートとなりましたので、事前の資料配布が望ましい旨を事務局にお伝えさせていただきました。次に会議室に移動し、各PEのポイントを担当Moderatorに順に説明していただきました。TIの心得として、新しいテーブルを担当する際の自己紹介、Moderatorのデモ後に実習を始める際は各テーブルで手順を最終確認してから開始すること、オープンクエスチョンを活用することが明確に指示されたことが印象的でした。その後、Small group discussion用の新規症例の確認などが行われ、約2時間のPre-courseが終了しました。

翌22日(木)からコースが始まりましたが、TIとして初日はAO Skills Lab内の1ブース(PEスケジュールとの兼ね合いで全10ラウンド中5ラウンド)とPE×3回、2日目はPE×5回、3日目はPE×4回を担当しました。前述のごとく少し不安のあったAO Skills Labですが、私は『Torque measurement of bone screws』というスクリュー挿入時の至適トルクを骨質ごとに体感するブースをChairpersonの前先生の細やかなサポートの下に進めさせていただきました。前夜~当日早朝にかけて急遽案内された事前学習ビデオのおかげで、また受信機の動作不良が多いブースとのことで海外スタッフも来日していたこともあり、滞りなく実習が行えました。このブースに限局する申し送りですが、トルク測定器であるドライバーが送信機となっており、スクリューを挿入する模擬骨を受信機のできるだけ近くに設置することが重要です!
初日の夜には恒例の全員懇親会が開かれ、FacultyおよびTIの先生方のみならず全国各地から参加された受講生と交流することができました。今回のBasic Courseに同門後輩の膝関節外科医(卒後14年目)が参加していましたが、「AO Skills Labがとても楽しかった。普段なんとなく行っていた手術における理論や、これまでの間違った解釈が非常によく理解できた。整形外科医は全員AOコースを受講すべき。」と熱く語ってくれました。アジアの他国において、整形外科専門医を取得するうえでAOコース受講が必須条件となっている国もあるようです。本邦でもそんな時代が到来するのではと期待に胸が膨らみます。

PEの詳細に関しては割愛させていただきますが、事前学習資料として案内されたAO Trauma HP内のPE Video(それぞれ10-20分程度、ほとんど英語)を閲覧して臨みました。PEを担当していて一番難しく感じたのは、当然のことかもしれませんが、受講生の経験・性格などが千差万別であることでした。培ってきた手技や好みや人生は様々です。各受講生の個性を吸収しつつ、AO法の基本に忠実にPEを進行し、各テーブル内でのQ&A(可能な限りオープンクエスチョンを心がけました)を繰り返し、ジョークも交えつつ、タイムスケジュールを守ることは実に大変でした。実習中にさらに個別に質問を受けることは、距離も近く有効ですが、全体に目を配れる時間が制限されるためほどよく切り上げることも求められます。またTIは2つのコースのPEを担当するため、ほぼ半日ほど立ちっぱなしの時間帯が3日間で4回あり、肉体的にも酷使されます。さらにはTIであっても、コーヒーブレークなどの空き時間に受講生から次から次に質問を受けることになり、もちろん迂闊な答えはできないわけで、継続的に幅広く知識をupdateしていく必要があります。考えていた以上にTIの役割が重要であること、そしてFacultyの先生方の入念な準備や努力があってこそ成立するコースであることが3日間を通して実感できました。

余談になりますが、5年前のAdvanced Course受講時にもInternational Facultyとして参加されていたSchelkun先生との再会は、思いがけず大変嬉しい出来事でした。当時、社会人大学院生であった私の臨床研究テーマに関係するSchelkun先生のご講演を拝聴した後、投稿前のAbstractとFigureを基にした個別ディスカッションの時間、そして激励の言葉をいただき、以後の大きな励みとなりました。今回、なによりもまず感謝の気持ちをお伝えし、その後の研究成果と現行の研究進捗状況を報告できたことは、とにもかくにもかけがえのない時間となりました。 最後になりましたが、今回TIとして推薦してくださった富山市民病院の澤口毅先生(現顧問・前理事長)、コース期間中にお世話になりましたFacultyの先生方、ともに悪戦苦闘したTIの先生方、AO Trauma Japan事務局の方々、そして受講された先生方にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。私の、今現在の学術活動におけるグローバルな視点・活動・交流のきっかけは、AO Trauma Japanとの出会いでした。まだまだ勉強不足な小生ではありますが、ご恩を少しずつでも還元できるよう精進して参りますので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。