AO Trauma Course – Advanced Principles of Fracture Management Yokohama, 2018/8/23-25 澁谷 純一郎先生 (山形大学医学部付属病院)

卒後10年となれば、日々の骨折治療にあたって疑問に思うこと、あるいは、果たしていま行っていることが世界のベストなのか悩むことがあります。また、知識の整理をしたいと思い、アドバンスコースの受講を以前から狙っていましたが、なかなか申し込むことができませんでした。高級ワインが買える安くない参加費とともに、アドバンスのレベルに自分がついていけるのか、という不安があったからです。しかし先輩の勧めもあり思い切って申込みました。

講義は15分程度でとても簡潔にまとめられており、いままで気にしていなかった手術のピットフォールや、寡聞にして知らなかった手術方法、最新の知見を多々学ぶことができました。やはりこのような系統だった講義を受けないと、知識の漏れはどうしてもあると思います。とはいえ15分程度の講義ですべてを網羅することは当然できないわけですので、疑問質問はあります。しかし小心者ですので、講義後に設けられた質問時間に挙手する勇気がありません。

そんな時は講義の後に少人数でのディスカッションがあり、そこならハードルも低く、講師にいろいろ質問することができたため、さまざまなことを教えていただきました。ディスカッションの提示症例から、成績不良例では、症例を振り返ってどのようにすればよかったか多くを学ぶことができました。一方成績良好例では良好な整復・初期固定性を得るための工夫がちりばめられ、大変勉強になりました。 

実習で用いるボーンモデルは軟部組織付きでタイプCの骨折が作られており、実臨床に即した実習が行えました。インストラクターの先生以外に講師の先生方もいらっしゃり、普段とは違うアプローチや整復方法を教えていただき、手を動かしながら学ぶことができました。上腕骨頚部骨折では、腱板に糸をかけプレートに締結する手技を苦手に思っていたのですが、本には載っていない細かな糸のかけ方や各々のスクリューの挿入順やその役割も、実際に手を動かしながら手技のコツを教えていただきました。上腕骨遠位端骨折も苦手意識があるのですが、わざわざ尺骨神経まで再現されているので、プレート設置位置や神経との干渉、どのスクリューがどの方向に向かってどこに挿入すると良いかなど、苦手意識払拭に向け、多くのことを学べました。骨折モデルも全く同じではないので教わった通りに行ったはずが、気が付いたら骨折部が転位していた場合、骨折部が割れてしまった場合など、トラブル発生時にも、どのように対処すべきか、どこが良くなかったかを、その場でインストラクターの先生に教わることができるのも魅力です。

冒頭「安くない参加費」と書きましたが、圧巻の講師陣や、3日間充実した実習を受けられることを考えると十分満足です。高級ワインは飲めば一瞬ですが、本コースで得られる知識や経験は自分の仕事に大きく、長きに渡って貢献します。また参加者は年代が近く、参加された意欲あるアドバンスド整形外科医に刺激を受け、大きく成長できたのではないかと思います。このような機会を与えて下さった講師の先生方やスタッフの方々に御礼申し上げます。この経験を今後の診療に生かし、更なる研鑽を積んでまいりたいと思います。