E-DA Hospital, Taiwan, 2018/6/18-7/27 久能 隼人先生 (亀田総合病院 整形外科)

2018/6/18-7/28に台湾高雄市にあるE-DA Hospital(義大醫院)をAO Trauma fellowshipで訪問させて頂きました。E-DA Hospitalは台湾南部の都市、高雄市燕巢區にあり2004年に設立された比較的新しい私立病院です。病床数は約1250床で400人以上の医師と内科系、外科系とあらゆる科が揃い、隣にはE-DA Cancer Hospitalという500床程度の病院と医学部を含めたI-Shou University(義守大學)を併設します。

整形外科は院長でI-Shou Universityの教授であるProfessor Yuan-Kun Tu(杜元坤)をはじめ15人のattending doctorと1-2年目のjunior及び3-5年目のSenior residentsの計10人(各学年2人)体制で台湾唯一のAO Trauma fellowship host centerとなっています。病院は地下3階から16階まであり、地下1階には誰もが利用できる非常に大きな飲食街やコンビニエンスストア、cafeや薬局、美容室まで揃っており、地下1階から低層階までは隣接するCancer Hospitalとも連結しており日常生活に必要なあらゆる物は院内で調達することが可能です。
期間中滞在したのは院内の敷地内にある宿舎で、病院までは徒歩3分程度でした。建物は非常に大きく綺麗に管理されており、部屋も単身者用でしたが広く清潔でした。宿舎内はWi-Fiの接続が得られませんが、LANケーブルは設置されておりインターネット接続は可能です。また連絡手段に関してはSIMフリー携帯の活用をお勧めします、端末があれば空港でSIMカードを購入し1ヶ月4000円程度でネットワーク接続無制限と非常に有用でした。

さてfellowshipの目的ですが今回E-DA Hospitalを訪問するきっかけとなったのは、過去に国外にて参加した数回のAO courseでProf.Tuに会い、その人柄や優れたレクチャーに魅了されたことに他なりません。 Prof.Tuは高度軟部組織損傷を伴う開放骨折や、偽関節に対する血管柄付き骨移植や皮弁、筋弁による治療で非常に有名で、現在このような複合組織損傷に対するOrthoplastic approachやfix and flap conceptの先駆けとなった存在です。また腕神経叢損傷に対するFree Functional Muscle Transferや神経移行術でも世界的に有名で、近年は更に中枢神経の再建にも取り組んでおられます。私は今回の目的として①腕神経叢損傷(BPI)の多様な病態及び治療戦略 ②重度開放骨折や難治性偽関節の治療戦略 ③研修医の教育システムの主な3つを学ぶこととしました。
まず言語ですが、医師同士は基本的に中国語を話すことが多いですが英語も問題なく通じます。 週間予定は、私は月-土曜日までは朝7時から病棟の回診、火、金曜日は朝7:15から抄読会、Case presentationに参加しました。これらは全て英語で行われます。いずれもまずresidentが行い、その後担当のattendingが関連するtopicsを絡め総括する形でその後討論となります。私も滞在中2回ほどプレゼンテーションをする機会を与えて頂きました。Residentの研修システムに関しては、彼らは2ヶ月毎に異なるattendingをローテーションする形になっており5年間に約3回程度同じattendingを担当することになります。Attendingのspecialtyは脊椎・外傷・手外科/マイクロ・人工関節・スポーツと大別されています。
手術は月-土曜日まで毎日予定手術が行われ、日中から夜間まで必要な緊急手術はその都度行われます。Attendingごとに手術日が決まっており8時頃には入室、8:30頃から執刀開始です。手術室は全部で24室ですが、隣接するE-DA Cancer Hospitalと手術棟同士が連結しており合わせると約50室程度になります。手術数は曜日によりばらつきがありますが、整形外科では週約100件程度だと思います。私は主に外傷及びBPI、脊髄再建の手術に参加させて頂きました。症例により手洗いさせて頂きましたが、皆細かに説明して下さり沢山の質問にも丁寧に答えて下さいました。目的の1つであったBPIの病態、治療戦略に関してかなり知識を深めることができ手技にも馴染むことができました。また外傷では特に大腿、下腿の難治性偽関節に対する創外固定及び血管柄付き骨移植やMasqueret法を併用した段階的治療法などを学びました。興味深いことに台湾の保険システムの問題でロッキングプレートを使用するのは自費となってしまうこと、長期間装着するのに適した創外固定がないためプレート用創外固定(TUMAplate)を開発、使用していることなど医療経済的視点も絡めて実状を知ることができました。

この6週間で私が掲げた目的は概ね達成されたように感じています。そしてそれは何よりもE-DA Hospitalのスタッフの方々の温かいサポートにより成し得たものです。平日休日問わず仕事終わりには一緒に食事をさせて頂き、様々な場所へと連れて行って頂きました。また一生の付き合いになるであろう関係を沢山築くことができました。本当に最高の経験となったことは間違いありません。この様な機会を与えて頂いたAO Trauma Japanの澤口理事長及び諸先生方、また私の所属先の亀田総合病院整形外科主任部長の黒田浩司先生及び他先生方に感謝申し上げます。

写真1:Prof. Yuan-Kun Tuと
写真2:morning meetingでのpresentation
写真3:E-DA Hospitalのmemberと