AO Trauma Pelvic Workshop with anatomical specimen Chiang-Mai, 2018/12/20 – 12/22 土居 満先生 (長崎大学病院)

そのはじまりは1通のメールでした。9月の某日AO Trauma Japanから12月にタイであるキャダバーコースに日本から参加する人を募集するというメールが届き、骨盤のキャダバーをまたやりたいと思っていた自分は迷うことなく参加希望の返事を出しました。日本から3名の参加でどうせ選ばれることもないだろうと思っていたら、参加の通知が届き、コースに参加させていただくこととなりました。

厚かましい私は2月にマスターコースでお会いしたDr. Suthornから立ち話でタイに来たら自分の作ったTrauma systemを見せてあげるよと聞いたのを思い出し、メールを送ったところ快く見学を受けていただきバンコク経由でチェンマイまで行くこととしました。 前日の夕方まで働き羽田経由でバンコクに到着した自分はBangkok HospitalにてDr.Suthornから系列の病院(45病院ありベッド数は合計で8000床以上、従業員3万人を超える規模)でいかに情報共有を行い外傷治療の平均化をしようとしているか、データを蓄積しデータベースを作って目に見える形で提供していることなどを教えていただきました。また系列の病院で持っている救急搬送システム(航空機、ヘリコプター、救急車、船も)についてもコントロールルームを見せていただき、またヘリポートなどの施設も見せていただきました。自分一人のために時間を割いていただいたDr. Suthorn、および秘書、アシスタントの方々大変ありがとうございました。 その後Dr. Suthon、Dr. Vajara(AOTrauma Asia Pacific Education Committee : Chairperson)のお二人とともにチェンマイへ飛行機で向かいました。

タイのfacultyはみな英語を流暢に話し、骨盤に対して造詣が深くちょっとしたコツやピットフォールを教えてもらうことが出来ました。またInternational facultyとして日本からは澤口先生、韓国からC.W. Oh先生が参加されていました。お二人の話はタイの先生も興味深く聞かれており、ケースディスカッションなどで悩ましい部分では澤口先生に意見を求める事ことも多々あり、澤口先生がこれまで我々日本人だけでなく、世界で骨盤を教えてこられたのだなと改めてその凄さを感じました。 個人的にはPararectus approachをやってみたかったので、C.W. Oh先生にコツを聞きながらキャダバーでトレーニングをすることが出来とてもいい経験となりました。 タイは交通事故の発生数が人口比でみると世界で一番多く、実際タイのどこに行っても酷い渋滞と交通マナーのよくないドライバー、バイクの2人乗り、3人乗りなどこれは皆怪我して運ばれるだろうなと思うこともしばしばありました。そのためか骨盤骨折の症例は多いようで、ケースディスカッションでは若年者の交通事故による日本ではあまり見ることのない症例が沢山提示されていました。 タイには骨盤骨折のネットワークがあり、コンサルタントが日ごとに決まっており、骨盤骨折の症例の相談が気軽にでき、場合によっては出張手術などもしているとのことでした。日本でもいろいろな先生が出張手術をされていますが、タイでは場合によってはスタッフ、機材まで持ち込んだチームでの派遣が行われているとのことです。これは骨盤の経験の浅い先生(決して若いではない)に手術をさせるのではなく、きちんとした教育を行い、指導者の付いた環境で経験を積んだうえで骨盤骨折を執刀させるというのが目的で、患者さんが不幸なことになることがないようとしきりに強調されていたのが印象的でした。

コーススケジュールが結構タイトで観光する暇もほとんどありませんでしたが、参加者には前日から(自分は到着が遅く参加できませんでしたが)夕食もレストランでセッティングされていてアジア各国から参加していた(国によってかなり骨盤をやっている先生から学生まで様々でしたが)先生と話をする機会を得ることができ、アジアの国の外傷事情を知ることもできました。 このような機会を与えていただいた澤口先生をはじめとしたAO Trauma Japan、そしてAO Asia-Pacificの皆さん、参加を快く承諾してくださり、不在期間中ご迷惑をおかけした宮本俊之先生をはじめとした長崎大学病院外傷センターの皆さんに感謝するとともに、この貴重な機会を今後の診療に生かしていければと思います。