Fellowship Report Regions Hospital, St. Paul, USA, 2022/7/25-9/2 永井 洋輔先生 (大阪市立総合医療センター 整形外科, 救命救急部ER外傷センター)

2020年から2度の延期を経て、アメリカ合衆国ミネソタ州セントポールにあるRegions Hospital(Level1 trauma center)で研修する機会をいただきました。過去のレポートを見ると、アメリカにFellowshipに行かれる先生は非常に
少ないことがわかります。シアトルにあるHarborview Medical Centerを除けば、ほとんどの先生がアジアやヨーロッパでのFellowshipを報告されています。

お世辞にも英語が得意とはいえない私ですが、少しでも知っている言語で多くを学びたいと思い、英語圏での研修を希望しました。研修責任者のPeter A Cole
先生は、Pilon Mapや肩甲骨骨折で有名ですが、Pelvic BridgeやSkiver Screwなど、既存の型にとらわれない手術方法を報告されており、ぜひ直接お話したいと思っていた先生です。実際にお会いしてみると、基本に忠実で非常に堅実な
手術が印象的でした。

写真1:お世話になったスタッフと新旧のフェロー

研修は毎朝6:20のX-rayカンファレンスから始まります。ハイブリッド形式のため外勤の先生方も研究室にいるリサーチチームも参加できます。朝までに来たすべての症例をレジデントが報告していくのですが、この時までには既に治療方針が決定され、術前適正化やスタッフの外来予約まで行われていました。基本的にはその通りの治療が継続され、レジデントにフィードバックされるシステムになっていました。レジデントに任される仕事は多くありませんが、教育がとても行き届いており、診断から初期治療までの質の高さに驚かされました。教育の一環として、週3回は7:00-8:00にスタッフからの講義があります。内容は様々で、OTAのカリキュラムに沿った各論講義や診察の仕方など、専門家からの臨床に即した講義は、基本的な内容でも非常に臨場感があって勉強になりました。ほかにも、医師の燃え尽き症候群について最新の話題提供をするスタッフがいたり、レジデントがCase Presentationをしたり、他科のスタッフに講義を頼んだり、実際に手術器械を触りながら説明したりと、型のない学びの場から多くのアイデアが生まれる土壌を感じました。

写真2:X-ray カンファレンスの様子(ハイブリッド開催)

手術に関しては、整形外傷専用の手術室2部屋と、整形外科の定期手術枠(2部屋)の合間で、日中の時間帯に手術していきます。その日の整形外傷手術室を担当するスタッフが、3人いるフェローと一緒に非常に効率的な手術室運営をしていることに驚きました。レジデントによって適正化された患者さんを、7:40から16:40入室の症例までどんどん手術し、症例数が多ければ翌日以降に繰り越していました。夜間は緊急症例のみで、翌日の日中に手術できる環境整備が夜間手術を減らすのに有用なことを痛感しました。手術室スタッフも整形外傷チームがいて、彼らのスキルや熱量にも圧倒された6週間でした。彼らとの他愛もないお喋りや、術中のコミュニケーションも英語圏の研修でよかったと思わせてくれました。また、フェロー交代の時期に研修していたこともあり、私をマンパワーとしてカウントしてくれるスタッフも多く、難しいと思っていた手術助手もたくさん経験できました。手術器械の英単語は実際に教えてもらいながら覚えるしかありませんでしたが、とても貴重な経験でした。すべての手術を終え、19時頃に退勤することが多かったのですが、夏のミネソタは21時すぎまで明るく、広大な青空が迎えてくれます。ビルと人に囲まれた大阪とは違い、1日の疲れもここでリセットされるように感じました。街中には飲食店も多く食事には困りませんでしたし、休日にはここぞとばかりにアメリカ観光に勤しみました。記録的な円安で支出は予想よりもはるかに大きかったですが、それ以上の学びと出会い、経験が得られたのは言うまでもありません。すべてを今後に活かしていきたいと思います。

最後になりましたが、パンデミック後では初となるFellowshipを受け入れてくれたRegions Hospital、プログラム実現にご尽力いただいたAOのみなさま、6週間の不在を快諾してくれた自施設のスタッフに深謝いたします。

写真3:19時前の広大な青空
写真4:Peter A Cole先生のご自宅にもお招きいただきました
写真5:スタッフによる講義の様子
(これもハイブリッド開催)
    医師以外も参加できます。私もこの会場で
プレゼンテーションの機会がありました。
写真6:Regions Hospitalからの研修修了証